伝えたい想い 〜それでもあなたが好き〜
駐車場へと戻る途中、目の前に広がった光景に思わず足が竦む。
それもそのはず。
行きに息を切らせながらやっとの思いで上ってきた長い階段を、今度は下らなければいけない。
ただ普通に下りるだけなら何の問題も無いのだけど、今日のあたしは踵が高いブーツを履いていたので、気を抜けば転がり落ちてしまう事必至。
しかしこんなに人が多い所で、ましてやケンジの前でそんな醜態をさらす訳にはいかない。
万が一にも踏み外さないように慎重に足を進めた。
「うー……転びそう。ブーツなんか履いてくるんじゃなかった」
「ははッ、転ばせないし。歩きにくいなら手、貸すけど?」
あたしの前を歩いていたケンジが不意に振り返り「ほら」と、手を差し出す。
少し躊躇いながらもそれが嬉しくて、恐る恐るケンジの手に自分の手を重ねる。
ぎゅっと握られて、まるで心臓を掴まれたみたいに胸がきゅぅっと苦しくなった。
繋いだ手からケンジの温もりが伝わって来て、まだ1月の寒空の下だというのに自分の体温がどんどん上昇していくのがわかる。