伝えたい想い 〜それでもあなたが好き〜
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「予約してある黒瀬ですけど」
「かしこまりました。こちらの席へどうぞ」
あらかじめ予約してあったあたし達は、店員さんに案内されてカウンター席へと座った。
「お姉ちゃん何飲む?」
「えーっと、あたしはオレンジジュースにしようかな」
軽くメニューに目を通してみたけど、帰りの運転があるあたしはソフトドリンクを選んだ。
運転が、とは言ってもお酒が飲みたくて来ているわけではないし、むしろグラス2杯程度ですぐ眠たくなってしまうし、飲んだとしてもカクテルくらいしか飲めないのだから、それならジュースで十分。
愛美はと言えば隣で注文を聞きに来た店員さんに向かって「生一つ!」と叫んでいる。
「この間忘年会で来た時も思ったらけど、ここって格好いい人多いよね」
程なくして運ばれてきた飲み物を手に取り、愛美とグラスをカチンと合わせて一口飲み込む。
「そうでしょ?あの人とかめっちゃ格好よくない!?」
言われて愛美の視線の先を追うと、背の高いイケメンの姿が。
「あとね、もう1人すごいかっこいい人がいるんだけど………今日はいないのかなぁ?」
この店の常連客である愛美は、ほとんどの店員さんの名前を把握しているらしい。
言えば名刺をくれるようで、愛美の財布の中からは店員さんの名刺が何枚か出てきた。
2人でくだらない話をしながら運ばれてきた料理をつまんでいると、1人の店員さんがカウンターの前を通りかかった。
何故かはわからないけど、彼が気になって仕方なかった。