伝えたい想い 〜それでもあなたが好き〜


「彼女ねー、いないんだよ」

お店も混んでいるしやはり忙しい様で、それだけ言うと苦笑いしながらすぐに仕事に戻ってしまった。

だけどあたしの胸はずっと、ドキドキと鳴り止まない。

「彼女いないって!」

「う、うん……ねぇ、愛美……」

「なに?」

「携帯とか……聞いたら教えてくれるかなぁ?」

初めは気になっただけで、別にどうこうするつもりなんてなかった。

だから、自分の口からこんな台詞が出てきたなんて、今でも信じられない。

「さあ?でもお客さんに聞かれたら断れないんじゃない?てゆーか、ちょっとでも気になったなら聞いておかないと後で後悔するよ」

それもそうかもしれない。

でも愛美の言う通り、教えたくなかったとしても当たり障り無く断るのは結構難しい。

ましてや彼はこの店の店員だから、お客さんの気に障る様な事を言ってしまえばもうお店に来てもらえなくなってしまうかもしれない。

だとすればやはり断りにくいだろう。

それでもどうしても彼と友達になりたくて、愛美に唆されたのも手伝って彼が料理を運んで来た時に勇気を出して聞いてみた。


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