伝えたい想い 〜それでもあなたが好き〜


それから暫くすると、カウンターの前に彼がやってきた。

テーブルの上は食べ終わっていない料理で溢れているし、目の前にある料理以外注文した覚えはない。

一体何だろうと、頭に疑問符を浮かべていると彼が口を開いた。

「俺さ、今携帯持ってないからアドレスがわからないんだよね」

「……はぁ」

……って、まさかわざわざそれを言いに来てくれた訳じゃないよね?

そんな事言われたら、アドレスがわからないから教えられない=教えたくない訳じゃない、と都合よく解釈したくなってしまう。

「じゃあ、あたしのアドレス教えましょうか?」

それならと思い、自分の携帯を取り出そうとバッグをまさぐるが、こんな時に限って目当ての物はなかなか出て来ない。

こんな事になるなら普段からバッグの中身を整理しておくんだった。


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