伝えたい想い 〜それでもあなたが好き〜
「すいませーん」
「はーい、今行きまーす!あ、じゃあ、一応メモしておいてくれる?」
「あ……」
他のテーブルのお客さんに呼ばれた彼は、それだけ言い残すと足早にカウンターの前を離れて行ってしまった。
よくよく考えてみたらこれっていわゆる逆ナン?
そう思ったらなんだか急に恥ずかしくなってきた。
男の人に自分から連絡先を聞いたことなんて今までなかったからどうしていいのかわからない。
それに、自分のアドレスを教えるにしたって、メモをする為の紙もペンも持ち合わせていなかった。
諦めて携帯を探す手を止め、力なく肩を落とす。
「“一応”って言ってたし、やっぱ迷惑なのかもね……」
そんなあたしの様子を見た愛美が、すっかり中身が無くなったグラスに虚しく残った氷をカラカラと揺らしながら呟いた。
「うん……あたしもそう思った。どっちにしても書くものも無いしね」
「なんか、話盛り上げるだけ盛り上げといてごめん……」
「しょうがないって。愛美の所為じゃないし。あーもー!ほら、飲んで飲んで!」
当事者のあたしよりもしょんぼりしてしまった愛美にメニューを渡し、若干の諦めきれない思いを隠して、気分を盛り上げるように追加の注文をした。