零才塔
「ミズキに尋ねる。もし、そのペンダントを持っていなかったとしたら、何処から飛び降りただろう?」
こちらの質問にあまり答えてくれない老人に少し苛立ちながら、塔の最上階を思い浮かべた。
3方が深い森林で1方がゴツゴツした岩肌に小さな湖。
恐らく……身の安全を考えて少しでも柔らかいクッションのある方、森林の方へ飛ぶのが普通だろう。
「きっと、森林だったと思います」
「よろしい。それがわしともアジュとも初対面である理由と言う事になる」
「では、主守様はこの場所に何か意味があると感じてペンダントに残した、という事ですか?」
「その通り。ちょうど今いるその辺りで彫っておった。尤も記憶を失った時点でその意味すら忘れてしまった筈じゃがな」
ここは一体何処なんだ?
何が起こっているんだ?
震える唇でミズキは問う。
「では、森と湖の違いは何なんです?」