零才塔



「先程も話した通り、森に落ちた守人は口頭でしか世界の情勢を知ることが出来ない」



「……はい」



「つまりは……誰も信じなかったのだ。君達の住む街は平和そのもので誰もそれが当たり前だと疑う事すらしない……結果……」



「争いに発展したと言うのですか?」



……だとすれば、私達の存在は一体。それに仲間は、何処へ消えてしまったと言うのか。



「仕方のない事。我々も掟に従ってここで暮らしている。掟を破った者はそれなりの処罰をしなくてはならない」



「そんな……でもっ!!」



叫ぶミズキの言葉はまたしても遮られる。今度は深い深い悲しみを湛えた老人の真摯な瞳によって。



「一度だけ問う。……ミズキは……世界をどうするつもりじゃ?」



「どうするって……そんなの、何が出来るか分からないけど、宮殿に行って、みんなを説得して、争いなんてやめてもらうしかないだろ?」



大声を張り上げると、老人とアジュの瞳から静かに一筋の涙がこぼれ落ちた。


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