零才塔
旅をしていて気が付いたこと。
宮殿の周りを囲う森と湖。それは天の世界そのものであった。繰り返さない為に全て湖にしてしまえばいい。
そんな事を考えていたミズキだったが、どうやらそれも叶いそうに無い。
現実を見つめ、自分たちの使命の重さを実感する。
その時ふと、ミズキは不思議に思い尋ねてみた。そう……無事に戻った他の守人達に。
「12ヶ月間、皆さんは一体何処にいたのですか?」
しかし、その答えを知るものは誰もいなかった。
その光景を見て、ミズキは更に肌で感じる。
ひょっとしたら、自分達が記憶を失う12ヶ月間は、こうしてある日争いが起こってしまった時の為なのではないのか、と。
平和な世の中であった場合、守人が平和を願わなかった場合、私達はきっと眠りにつかされる。
そんな、この記憶さえもきっと、街に戻る頃には消えてしまっているのだろうけれど……安堵の表情を浮かべたまま、ミズキは柔らかい光に包まれ瞳を閉じた。