零才塔



それから数日後、次の満月の夜がやってきた。



「これを持って行きなさい」



「主守様、これは?」



首から下げるネックレスのようだがペンダントの裏に引っかき傷のような跡がある。



「今まで塔で記録したものも消えていただろう?」



確かに、紙と筆を持っていった事もあったが、この街へ戻るときには全て失われていた。



「それはわしが記したもので唯一持ち帰ったもの。何かのヒントになるかもしれん」



「何故そんな大切なものを私に?」



ミズキはここで守人になってまだ浅い方だ。先輩に預けたほうが確実だろう。



そんなミズキに主守は低く唸りながら言葉を紡ぎ出す。



「実は……戻ってきていないのだ。ミズキが最後に登ってから誰も……」



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