零才塔
「とにかく私が行ってきます!必ず確かめて参ります!」
異常な事態に気持ちだけが逸る。
「頼んだぞミズキ。他の守人を連れて帰ってくれ」
力強く頷くと新しい服に着替えて街をそっと離れた。
隠れるように移動しているのは、街の人間が恐ろしがって守人には近づかないからだ。
「俺だって普通に人間なんだけどな?」
それも、守人の道を選んだ以上仕方が無いのだが。守人の多くは孤児であり主守に育てられた者。
家族愛を知らない彼らはひたすらに、天に仕える事で存在価値を見出しているのだ。
守はカミと読む。神を守る人、が語源だというのが一般的な考え方だ。
だけど……少しだけ寂しいな、12ヶ月ぶりにさっぱりさせた頭を掻きながらミズキは塔へと歩を進めるのだった。