零才塔
ここを登るのはもう何度目になるだろう?最初に登ったのがたしか10歳の時だったから……7回目か。
あの頃は1000段も登るなんて絶対に無理だと思ったっけ?
石造り独特のひんやりした廊下を曲がると1段目が顔を出す。静かすぎるその塔の先を示すのは月明かりだけ。
この明かりが無かったらとても登ることは叶わないだろう。
時折空いた窓……と言ってもただの四角い枠だけなのだが……そこから満月を眺めると少しだけ安らいだ気持ちになる。
ふと思い出し、主守から預かったペンダントを光に照らしてみた。円が描かれその一部分が切れている。そこが何かの入り口なんだろうか?
しばらく眺めていたが時間が無い事に気が付き、再び1段1段を噛みしめるように歩き続けた。
正に足が棒になり、ぜぇぜぇと吐き続ける息が乾燥して喉を痛める頃……階段の先に静かに佇む扉が見えた。