零才塔



何時間が過ぎただろう……。



小さな湖のほとりで目を覚ました時には既に日は上がっており、白くもやがかかったような世界に目を数回ぱちぱちとさせてみるものの、視界は変わらないままで……。



とりあえず、外傷は無い様なので立ち上がる。



「さっき見えた湖……なんだよなぁ?」



疑うのは無理も無い。その小さな泉を背にしてみてもそこには塔の姿はないのだから。



無傷である事も気になる。どこか違う世界にでも飛ばされたのだろうか?



いや、でも……そんな非現実的な事。



いつもこんな世界に来ていたのか?



失った記憶を呼び起こそうとしてもやはり無駄で……その場に座りなおそうとしたその時!歩いて来た一人の少女と目が合った。



「アナタ……どこから?」



青い瞳を真ん丸にして驚き去ろうとする少女に



「待って!」



と駆け寄る。右も左も分からない場所で出会えた人を逃す訳にはいかない。



ゆらり、と左右に振れる首のペンダントを見た瞬間、少女は更に大きく目を見開いた。


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