金魚草。



事の始まりは、ほんの数十分前のこと。



「あ…わぁっ!」



食堂でトレーを持ったあたしは、歩いて来た男にぶつかった。

オレンジジュースはこぼれ、カレーに入っちゃう惨事。


…それなのに。



「あぁ!?
てめぇっ!どこ見てんだよ!」

「は?」



あたしが怒られる始末。


あたしはトレーを持って歩いていただけじゃん。

前を見てなかったのは、明らかにぶつかった男の方。


それに、手ぶらのあんたと違って、あたしはカレーもジュースも……

明らかに被害者だ。



「ぶつかったのは、前見てなかったからでしょ!?
それに、あたしは被害者!
だからあんたが謝るべきじゃないの?」

「あ゙ぁ?」

「…………っ」



啖呵を切ってから、今ごろ気付く。


何とも怖面な人…


あたしは感情に任せてしまうことが多い。

そして、いつも決まって後悔する。



「ごめんね」



スッとあたし達の間に入って来たのは、なんとも長身の男。

茶色の髪はフワフワしていて、顔だって……



「ゔ…」



……その前に、チャラ男だ。


第二まで開けたシャツから見えるのは、ジャラジャラしたネックレス。

男なのに、指輪もしてる…


この男、気持ち悪い。



,
< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop