金魚草。



「俺の名前だよ、三浦 晴希」



ご丁寧にフルネームまで。

生憎、あたしはあんたの名前を覚える気はないけど。



「…その三浦さんが、あたしにぶつかった人と何か用?
友達なの?」



あぁ、あの男…

また青ざめやがった。


その反応…友達じゃないの?

あー…先輩、とか?



「まぁ、一応。
獅子の幹部なもんでね」

「は?獅子?」



なんだそれ…



「その様子じゃ、知らないだろうなと思ったけど…
本当に知らないんだね」

「…何気失礼ですね」



その獅子とやらを知らないからって笑われる意味が分からない。


だいたい獅子って…

ライオンじゃん!


その幹部って…

は?幹部?

え?


幹部って…



「獅子ってなにかのグループ?」

「え、そこが疑問なの?」



失礼極まりな無いぞ、この人。



「…獅子はどうでもいい。
ってゆうか、あたしはあの男に謝ってもらいたいだけだから」

「そっか、迷惑かけてごめんね」

「だから、あんたじゃなくて…」



あー、イライラしてきた。


あたしの苛立ちが、矛先を変える。



「ってゆうか、あんたもね。
幹部?偉そうにしちゃって?
獅子だかトドとか知らないけど」

「…トド?」

「下っ端のしつけもろくに出来ないなんて、ただの行きがかりってやつじゃないの!?
あんたで幹部なら、もっと上の人は、さぞかしチャラチャラしてるんでしょーね!」

「……………」



…しまった。

さすがに言い過ぎた。


後ろで青ざめていた男が、泡を噴いて倒れたのを、あたしは見てしまった。



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