Don't a hero
「あっ!賢吾くーん!こっちこっち!」
昨日とおなじ端の席に彼は座っていた。
俺が走って来たにもかかわらず、彼はだいぶ前に来ていたらしい。
彼の目の前においてあるアイスコーヒー…。半分以上減っている。
「ほら、早く座りなよ。」
「あ…はい。遅くなってすみません。」
俺が軽く謝罪すると、
「ううん、実は俺、賢吾くんから電話がくるまえから、ここにいたんだ。ここのアイスコーヒー、めちゃくちゃうまくてさ!」
彼は少し照れながら無邪気な笑みをこぼした。
俺はびっくりした。
『こんな笑顔、みせるんだ…。』
見た目は黒ずくめで、下手したらマフィアと間違えそうな位なのに、それに似合わない明るい性格だ…。
俺はふと、雅樹のことを思い出す。
『なんか…。この2人、似てるな…。』
「ん?賢吾くん?どうかした?」
しまった。つい見すぎた。
「いえ、なんでもありません。」
俺が言うと、彼は笑顔で
「そっか。じゃあ早速、話させてもらうよ。」