Don't a hero
後ろを振り返っても、延々と森は続いていた。
ここはすでに森の中だ。
しかし、普通の森ではないことは、すぐわかった。
森の中は、5月にしては肌寒く、木々は少し黒ずんでいた。もちろん、鳥や動物の鳴き声なんかは一切聞こえない。
森の奥は暗くて何も見えない。
ずっと見ていると、逃げ場のない闇に引きずり込まれそうだ。
「賢吾さま。今から組織の基地に向かいます。しっかり私達についてきてください。決して、勝手に動きまわらないように。迷えば命は無いようなものです。」
ガタイのいい男…福留さんが、真剣な顔をして言う。
俺は黙って頷いた。