【完】好きじゃない。
五年後の彼は、
ずっと、ずっと、大人っぽくなっていた。
けど、そんな事を考えたのはもっと後の話。
その前にあたしは、
彼の胸に飛び込んだ。
変わってない…この、心をホッとさせる温かい腕の中。
「ただいま、佳奈」
「おかえり、京也」
「初めて名前で呼ばれたきがするっ」
「ふふっ」
「…好きだよ、佳奈」
「…」
無言なあたしに、
彼はあの日と同じ言葉を問いかける。
「佳奈は?」
あたしも、
あの日と同じ言葉を返す──。