君は桜
第1章:冬の桜
芽生えたのは恋
縁起が悪い、と思った。
昨日テレビでお天気お姉さんは、笑顔で「明日は晴天です」なんて言っていたのに。
……訴えてやろうか。
晴天どころか、上も下も真っ白じゃないか。
雲で覆われた低い空。雪で覆われた白い道路。
こんな大事な日に雪が降るなんて……。ここは雪国でもないのにっ!!むしろ都会に近いはずなのにっ!!
「うぎゃあっ!!」
……縁起が、悪い。
隣で歩いていた吉原亜里[ヨシハラ アサト]が、雪のせいで見事に滑った。
「ちょ、縁起悪い!!」
「あたしだって滑りたくて滑ったわけじゃないわ!!」
様々な制服着た同い年の子達が、クスクス笑いながら横を通り過ぎて行く。
あともう少しで学校っていうのに、私達は何をやってるんだろう。
まじむかつくと言いながらスカートをはたく亜里は、緊張の欠片もない。
……まあ、私もなんだけど。先生が言ってた程緊張していない。なんていうか、実感がないのかな。
今日は、高校受験の日。
雪と亜里のせいで気分が下がったけど、そんなこと言ってられない。
まあ、絶対この高校に入りたい!!ってわけでもないんだけど。