17-セブンティーン-
センパイは走者からバトンをもらうと、あっという間に走って行ってしまった。
名字、南条って言うんだ。
「そうだね。なんで?」
「みんながイケメンだって。
私、名前は知ってたんだけど顔をよく見たことなくて…」
橘さんは興味津々に南条先輩へ視線を送っていた。
「うん…!確かにイケメンだ」
満足そうに小さく頷く。
太陽は相変わらず真っ直ぐ真上に上がっていて、カンカンに照っている。
体育では長袖になれないので、俺は左腕に包帯を巻いていた。
二の腕の半分から、肘の半分くらいまで。
熱中症対策の一貫で、出場者以外はテント内での水分補給を許可されている。
係ももちろんこれに該当する。
俺はペットボトルを開けて、水分を補給した。
「ちょっと君」
「へ?」
「石灰入れてきてくんない?」
「えっ?あ…」
隣のテントの整備係の担当教員が、用具係の橘さんにむちゃ振りをしていた。
「すいません、僕たち用具係なんで」
固まってしまっている橘さんをすかさずフォロー。
すると先生は、顔色ひとつ変えずに言った。
「いいじゃん、君たち暇そうだし」