17-セブンティーン-
早くも隣で息が荒くなるお袋を、ちらっと見ると
目に涙を溜めて、顔が真っ赤になっている。
運転中に我慢していたものが、徐々に溢れているようだった。
『あなた!』
病室には医者と数人の看護師がいて、俺たちを見るとさっと道を開けてくれた。
俺たちは父さんに近づき
ベッドの周りで膝をついた。
父さんはうっすら目を開けた。
『あなた!』
『父さん!』
お袋は里香を抱いたまま、父さんの手を握って自分の頬に当てた。
父さんは指を僅かに動かして、お袋の頬に流れる涙を拭った。
お袋は一生懸命笑顔を作り
『最後まで…ありがとう…』
と伝えると、父さんは首を立てに振った。
『父さん…』
気がつくと俺も、涙が止めどなく流れていた。
伝えたいことはまだたくさんあるはずなのに
陽介と握る父さんの手を、自分の震えで共振させることしか出来ない。
そんな俺に向かって父さんは
ゆっくり瞬きをした。