17-セブンティーン-


大人の男が怖かった。

でも父さんは、知らず知らずに俺の心を引き寄せ温めてくれた。


大好きだ、この人が。


交わした言葉は他愛もないことばかりだったかもしれないけど


過ごした時間、新しい家族、俺の欠けてた心、

小さな幸せ


くれたものは、大きかった。


『大丈夫だよ父さん…』


俺は涙を拭った。

俺はもう、いろんなものを怖がって、小さくなってたあのときの俺じゃない。


父さんが教えてくれた、変えてくれたから


『安心していいよ、俺も大丈夫だから』


もう恐れるものはない。

父さんが満たしてくれたから。


『ありがとう…』


そのとき、父さんは残っていた力を振り絞って

ぎゅっと手を握り返して来た。


『!』


みんな思わず前のめりになる。

父さんは真っ直ぐ正面を見て、
ゆっくりと目を閉じた。




ピーーーーーーー





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