17-セブンティーン-
声には疑問の色が伺えた。
返事の代わりに、ぱちっと視線を保坂さんに移す。
「にしはらくん、珍しいよ?」
彼女は俺を真っ直ぐ見つめた。
逆光で保坂さんの表情がほとんど暗い分、
きらっと光って見える瞳には、無駄に迫力があった。
俺はごくりと唾を飲んだ。
「あー…いやぁ…」
俺が言葉を濁す。
「知り合いを見かけたら…声くらいかけるでしょ」
我ながら上手い切り返しだと思った。
保坂さんは、ふっと笑った。
「そっか」
それは俺が始めてみた、保坂さんの《人を馬鹿にした笑い》だった。
なんだか悔しかった。
用事がなければ声をかけるはずがない…
保坂さんにとって俺も、そういうその他大勢なのか。
多少なりとも他のやつらよりは…という思いがあったのに、
それは俺だけだったのか。
いやいや落ち着け…
実際俺が優先しているのも、
保坂さんより《その他大勢》の方だ。
そいつらに保坂さんと仲がいいなど思われたくない、というのが俺にとって優先項目。