17-セブンティーン-
穴埋めが完了し、ペンとプリントを礼を言って返した。
「保坂さん、帰らないの?」
「うん。勉強しながら、ママ…お母さんまってる」
保坂さんは《ママ》を《お母さん》と言い直した。
それがすごく愛らしく感じた。
確か保坂さんは親に送り迎えしてもらっていると、聞いたことがある。
「何時頃迎え来るの?」
「5時」
「待ち長いね。お昼食べた?」
「うん」
「そっか」
俺は席を立った。
「保坂さんの邪魔になる前に俺も帰ろっかな。俺も真面目に勉強しないと」
彼女はふふっと声をもらした。
彼女は意外と、よく笑う子だ。
「じゃあお先」
俺はドアに手をかけた。
「またね、にしはらくん」
思わず動きが止まった。
俺の名前…知ってたんだ。
振り返ると、彼女は俺に手を振った。
俺も手を振った。
「明日からがんばろうね」
彼女は頷いた。
俺は、自分が笑っていることに気がついていた。