17-セブンティーン-
教室に戻ると、相変わらず保坂さんは、窓の外を見ていた。
彼女の近くに行ってみて気がついた。
彼女も長袖だ。
「何時頃、迎え来るの?」
「1時…はん」
窓の外に青々とした樹が、ちょうどいい影を作っている。
遠くにグランド。
今日からまた部活が再開している。
そして真下にはチャリ置き場。
「ん?」
屋根、少しへこんでないか?
そのとき
ブーブーブーブー
保坂さんは首から下げていたストラップを引き上げると、携帯が出てきた。
画面を開くと、左ではなく右のボタンを思いっきり押し
「もしもし…あれ…もしもし…」
彼女は首をかしげた。
「電話取るときは、こっちじゃなくてこっちのボタン押すんじゃない?」
「え?」
「こっち押したでしょ?これ切れちゃう方だよ」
彼女はじっとボタンを見つめた。
自分がどちらのボタンを押したか、わかってないようだった。
「お母さん?かけ直したら?」
「うん」