17-セブンティーン-
両手で一生懸命ピッピッと携帯を操作するたび
かわいらしいストラップが揺れる。
彼女は顔を上げた。
「お願いします」
「え、何が?」
「え、番号…」
あぁ、と俺は橘さんに番号を教えた。
橘さんは俺の番号を読み上げると、「登録完了!」と俺に指でマルをして見せ、
またハッとしたように目を伏せて「ありがとう」と言い、行ってしまった。
すごく落ち着かない、なんだかあっという間の出来事だった。
なんだ今の。
っていうか、何の用事で電話してくるんだろう。
ま、いっか。
俺はいつもの調子で教室を後にした。
暑さのせいだろうか。
いろいろ考えるのが最近とても面倒くさい気がする。
にしても携帯…か…。
ふと、窓の外に橘さんの姿を見つけた。
早いな、もう外か。
数人のメンバーで楽しそうに笑ってる。
あ、他のメンバーも同じクラスか?
前を向くと同時に、俺の頭には
『そういえばバイト先に連絡しなきゃな』
ということが浮かんでいた。
携帯がなくて気まずかったことも
突然女の子に連絡先を聞かれたことも
スケジュールに保坂さんの名前がなかったことも
既に俺にとっては、通り過ぎた出来事になっていた。