17-セブンティーン-


「面倒見のいいお兄さんなんだね」


橘さんは笑った。

彼女の顔を見て思い出した。


「そうだ、昨日の夜…」


俺が言うと、再び橘さんの顔が赤くなった。


「家に電話した?ごめん、バイト行っててさ。帰ったの遅かったし、今日会うし…で、かけ直さなかったけど」

「いいのっ!だっ大丈夫!」


橘さんはまたぶんぶんと手を振った。
今回は頭も横に振った。


「何か用事でもあったんじゃ…」

「いや…あの…そうだ、数学!」


橘さんは顔を上げた。


「西原くん、数学の課題解いた?」

「いや、まだだけど」


俺の即答に、橘さんはがっくりと項垂れた。

この人、忙しいな。


「ちょっと…わからない問題があって…教えて頂けたらなって…」

「いいよ」

「えっ!」


橘さんは再び顔を上げた。
その表情は《驚愕》の二文字に尽きる。


「今日その課題持ってる?」

「あります!」

「じゃあ作業が一段落ついたときにでも」


橘さんは深々とお辞儀をした。


「ありがとうございますっ!嬉しいですっ!」

「そんな大袈裟な…」


彼女はだいぶ忙しい人だ。




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