17-セブンティーン-


階段を上がると、たまに授業をしている先生の声が聞こえる。

今日うちのクラスでは課外は行われていない。

教室に着くと、まだ制作途中の巨大パネルが後ろに立て掛けてあった。


教室には誰もいない。


「今日もう1人誰だっけ?」

「えっとね…」


橘さんは適当な答えをくれて、画用紙を集めた。

パネルに近づいて見ると、薄く鉛筆で下書きがされてある。

この作業の面倒なところは、全て切り絵でないといけないというところだ。

絵の具だと色の濃淡がまだらになって、あまり綺麗じゃないらしい。

故に体育祭のパネルは切り絵で――という伝統がある。


「とりあえずちぎるか」


俺は赤の画用紙を数枚取り、近くの机に座った。

橘さんはとりあえず教室の窓を全て開けて、俺にビニール袋を差し出した。


「ありがとう」


橘さんはうつむきながら、にっこり笑った。

そして俺の座った机の前の席を180゜回転させ、向かい合う形で座った。


「…」

「…」

「…」

「…やっぱりダメですか」


立ち上がろうとする彼女に「いや、いいよ」と声をかけると、彼女は再びイスに腰を落とした。


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