17-セブンティーン-
『あー…いい、いい』
先生がにこにこしながら、ゆっくりと一番後ろの彼女の席へ向かい
彼女を止める数人の手を離した。
そして腕時計を見て、彼女に向き直り
『よく頑張った。また戻っておいで』
と言い、道をあけた。
彼女は小さくうなずいて、ぱたぱたと小走りで、俺の真後ろのドアから教室を出て行った。
首にかからないくらいの、短めのポニーテールがぴょんぴょんと揺れる。
彼女はうつむいて、胸元をぎゅっと握っていた。
『申し訳ない。みんなに話しておかないとね。』
先生は相変わらずにこにこしていた。
『みんなには苦手なものってあるかい?』
ただでさえ初日で、緊張感が漂う教室。
先生は教卓から俺たちを見渡して、満足そうに、うんうんと頷いた。
『彼女はね、少しだけ苦手なものが多いんだ。
でもね彼女は彼女なりに、君たちに迷惑をかけないようにしようとしている。それだけはわかって欲しい。』
先生からそれ以上の言葉はなかった。
何も解決してないようなわだかまりが残ったが、誰も言葉に出来なかった。
その日、彼女は戻って来なかった。