17-セブンティーン-
「だって鉄板だろ、知らないけど」
クラス委員は、すーっと息を吸った。
「お前みたいなやつらのお陰で、俺は自分の名字が大嫌いだ。
だけど残念ながらこの名字から逃れる方法は、婿養子になる他ない。
俺は高い確率で、一生ヤモリの影に苦しめられながら生きていくんだ。
最悪まだ見ぬ俺のかわいい子供たちまでヤモリの影に…」
「わかった!わかった!」
放っておけば永遠に続きそうなクラス委員の演説を、無理矢理遮る。
彼は満足そうにニヤリと笑い、鼻あてを上げた。
「俺が悪かった。ヤモリなんて呼ばねぇよ。まだ見ぬお前の子供に誓って呼ばねぇ」
完全に敗北を認めてやった。
「さすが西原、話がわかるやつだ。そうしてくれると助かるな」
クラス委員はまた前を向いて、俺の先を歩いた。
すぐに分かれ道になる。
「じゃあ西原、パネル2回お疲れ。バイト頑張れよ」
「うっす、おつかれっす」
「じゃあな」
「うん、またな」
クラス委員は片手を挙げて行ってしまった。
その背中を少し見送って、俺もママチャリを走らせた。