17-セブンティーン-
合図のない合図
2学期の始業式の日。
いつも通りに教室の後ろ側のドアをガラガラと開けて教室に入ろうとしたら
教室中から一斉に視線を浴びたが
一瞬の出来事だった。
「よ、英治」
すぐ近くの賢が声をかけてきた。
「お…おう」
賢の奥の翔太にも手を上げる。
教室を見渡すように壁に背中を着けて、椅子の背もたれと机に手をおく、いつもの賢の座り方。
クラスの大多数が教室の後ろ側に集まって、パネルを見ていた。
しかも黙って。
居心地の悪さが尋常じゃない俺は、机に荷物をおいて賢に寄る。
「なに?なにかあった?」
賢は黙って立ち上がり、俺を誘導した。
みんなに近づくと、何も言わず道を開ける。
賢に着いて行くと、パネルの前に座り込んでいるクラス委員と
「な…んだよコレ…!」
黒ペンキで汚され、大きなバツで真ん中を切り裂かれているパネルがあった。
「よぉ、西原」
俺の呟きに気がついて、クラス委員が俺を振り返る。
俺はクラス委員の横にしゃがみ込んだ。
「な、なんで?なにがあったんだ?」
興奮気味の俺と違って、クラス委員は顔色ひとつ変えてない。