17-セブンティーン-
「1番に着いたやつが気づいたらしい」
「1番のやつって…」
振り返ろうとした俺を止めるかのように、クラス委員は言った。
「ペンキが綺麗に乾いてるから、夏休みの間にやられたな」
クラス委員は力なく、はぁっとため息をついた。
「絶対アイツだよ」
どこからともなく声がした。
元々静かだった教室が、ますます静かになる。
「アイツって…」
誰だよ、と言おうとしたときだった。
ガラガラガラ…
教室の前方のドアが開いて、みんなの視線が、自然とそちらを向こうと後ろを振り返る。
振り返ったまま、戻らなかった。
俺とクラス委員が立ち上がったのはほぼ同時。
教室の前のドアに立っていたのは他でもなく、保坂さんだった。
静けさの中に、嫌な緊張感が走る。
保坂さんは視線を下げたまま何も言わず、自分の席に荷物をおいて座った。
ここから見える、みんなの背中と
ここから見えない、みんなの視線。
《アイツ》とは、保坂さんのことだった。
「ありえねー」
「よく来れるよね」
どこからともなく声があがる。