【ほのB】リトル・プリンス
 僕は、元々男が好きなワケじゃないハニーに、少しでも気に入られたかった。

 博士、とかって呼ばれて社会的にも地位のある、ハニーに釣り合いたかった。

 だから。

 僕は、ハニーの子どもが産める、本物の女の子になりたかったんだ。

 今までは『男』であることを誇示するように。

 何人も、何人も、むやみに抱いた女の子の記憶をたどってはみたけれど。

 わかったことは。

 僕は、絶対に、女の子にはなれないってことだけだった。

 それでも。

 ハニーは、僕を側に置き。

 心から愛してくれたんだけど。

 男の僕をどうやって扱ったらいいのか判らずに。

 ベッドで、僕を女の子のように抱いた。

 それが、胸が張り裂けそうなほど。

 ハニーのコトが愛しくて……悲しかったときがある。

 ……

 ガロティンは、基本、明るい曲だ。

 その時のコトを思い出して、微笑みながら泣くように。

 全身を使って表現すれば。

 息を呑み。

 僕に釘づけるように見つめる視線を感じた。

 舞台化粧もそこそこに、楽屋から出て来る群舞の人や、なんか。

 いくつも見つめるその中で、特に強い視線の数は……三つ。

 それが誰かと確認した時点で、一回目のサビが終わった。



 アイ・ガロティン……

 アイ・ガロタン……!



 結花の歌う二度目に回って来た曲のサビに身をゆだねながら。

 心配そうな顔の直斗に、大丈夫だと微笑んで。

 大きな目をこぼれ落ちそうなほど、見開いた、俊介には鼻で笑い。

 鼻の下が伸び始めたトシキに挑発的な視線を送る。



 ……ったく!



 秘密の、とは言え。

 妻子がすぐそばに居るんだろうが!

 みっともねぇヤツ!

 
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