【ほのB】リトル・プリンス
あとは、もう。
端から、どう見えるのかとか。
芸術性が、どうのこうの、なんて関係なかった。
野郎二人。
バルデオールとトケ。
どちが、より正確なリズムを刻むのか。
より、難しいワザをやり遂げるかの意地の張り合いみたいになった。
フラメンコなんて、そもそも、酒場の踊り。
本来なら適当に酒を飲んだヒトビトが、ほろ酔い気分で踊るものだから。
踊りや曲に関するルールが、他のヤツに比べて、おそろしく緩いんだ。
それをいいことに、たった一小節分に、山ほど。
それぞれステップやら、音譜やらをぶち込んで『どうだ!』と胸を張り、競い合う。
どうやら、肝心の腕の方は。
フラメンコじゃなく別の踊りでプロだった僕と。
ずっと、ギターを弾き続けてた、アマチュアのトシキとではお互い。
良い感じに拮抗していたようで。
とうとう。
カンテ(歌)の結花が、呆れてその口を閉じた頃には。
僕ら二人は。
踊ることが。
ギターを弾くことが楽しくて、ゲラゲラ笑ってた。
「……本っ当に、あなた達、莫迦じゃないの!?」
結花と違って、僕らの曲を、最後まで、真面目に。
パルマ(手拍子)でサポートしていた里佳まで、呆れた声を出した。
「螢君、確か夜勤明けのはずよね?
寝不足なのに、全力で踊ることなんて無いじゃない!
体調崩して、明日踊れなかったら、どうするの!」
「へ~~い。
ごめんなさい~~」
「それに、トシキさん!
あなたに頼むのは、ガロティンだけじゃないのよ!
最初の一曲で、バテたら、みんなの練習にならないでしょう!?」
「確かに、その通りです~~」
言って、トシキもポリポリとこめかみあたりを掻いた。
おお、怖~~