【ほのB】リトル・プリンス
本当に、一番怖いのは。
ぷんぷん怒った里佳じゃないのか?
なんて。
はしゃいで疲れ切った者同士。
ばてばてで、床に直に寝転んだまま。
トシキと顔を見合わせ笑ったら、また、怒られた~~
放っておいたら、金属のついたフラメンコの靴の先で、蹴られかねない剣幕に。
トシキは、やれやれと自分のギターを引き寄せ、起き上がる。
「あとは、群舞のセビジャーナスと、あんたのアレグリアスだろ?
オレだって、やるときゃ、やるぜ?
……もっとも、あと二曲。
こいつと同じレベルの音合わせだったら、さすがにどうかと思うけど」
「さすがに、ねぇ。
こんな、無駄に体力を使う、お莫迦な踊り手は、螢君ぐらいしか居ないわよねぇ」
「里佳~~!」
僕が、寝っ転がったまま、抗議の声を上げれば。
里佳は、両手を腰に手を当てて、睨んだ。
「螢君!
わたしの踊りのパルマは、群舞の人達みんなに頼むから!
その次のセビジャーナスは、一緒に踊れるように休んでおくのよ!」
「へ~~い」
ビシッと、言い放って、ファルダをひるがえし。
結花と話しに行った里佳を見送って。
トシキは、またゲラゲラと笑った。
「群舞では、あんたとペアなんだろ?
里佳のヤツ、よっぽど一緒に踊りたいんだろうな」
「ああ~~?」
確かに。
セビジャーナスって曲は、フラメンコの初心者が、まず習う基礎の踊りで。
フォークダンスや、社交ダンスのように、ペアになって踊ることは、踊るけど。
それは、別になぁ。
「本来は、男女ペアになる所なのに。
バルデオール(男の踊り手)は少なくて珍しいんじゃないか?」
「ふふん。
本当にそうかな?
……里佳は『あんたに』興味あるんだろ」
「……は?」