【ほのB】リトル・プリンス
 僕が、罪を犯していた頃。

 媚薬、だなんてモノの存在を知った。

 多少あやしくても、まあ。

 大人の店に行けば普通に市販されている。

 吸ったり、塗ったりすると。

 ちょっとエッチな気分になるかもしれない、軽いシロモノじゃない。

 女をダマして、カラダと財産を根こそぎ奪うような『店』で。

 従業員が本気の時に使う、プロ仕様ってヤツだ。

 どうしても、落とさなくてはいけない女が、なびかなかったとき。

 その相手に、こっそり呑ませたり。

 好みじゃない女性を、どうしても抱かなくちゃいけないときに、自分で呑むんだ。

 心のあり様を無視して。

 欲望を引きずり出し、爆発的な熱をあおるような。

 媚薬の存在は知ってたけれど。

 僕は、幸いにも。

 そんな媚薬に頼らずとも、この身一つで、必要なだけ、女性達の機嫌を取ることが出来たから。

 ほとんど使ったことがなく、すっかり忘れてた。

 それに、まさか。

 こんな、普通の場所で、真昼間。

 簡単に入れられてしまうモノじゃなかったから、完全に油断していたんだ。

 もちろん。

 こんなもの。

 普通のOLやおばさん連中が、持ち歩いているワケがなく。

 犯人は、考えなくても判った。

 僕は自分が発表するフラメンコの曲、ガロティンを踊った後に。

 そいつの手から、やけに苦いお茶をもらって飲んでいたコトを思い出していた。

 

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