【ほのB】リトル・プリンス
譲れない思い
どんっ!
がらがらがっしゃんっっ!!!
何かが、飛んで、壊れやすいモノが軒並み壊れる音がした。
そして、響く悲鳴と叫び声の中に『直斗君!』って声を確かに聞いて、僕は目を見開いた。
薄い、とはいえ。
壁を通して聞こえてきた、かなり大きな物音に。
思わず、みたいにトシキも僕から注意がそれた、と見た瞬間。
僕は、ずる……っと壁を伝って沈み込むと。
トシキの胃の上辺りに、力一杯、自分の肘をめり込ませた。
どがっ!
「う……っ!
がっ……!」
突然のために、身構えることも出来無かったろう。
急所の、みぞおちに、キレイに決まった僕の攻撃に。
トシキは、うめいて、うずくまった。
その横を、すり抜けるようにして、逃げ出すと。
壁を伝って、僕は、立ち上がる。
「ほた……るっ!」
腹を抱えたまま、立ち上がれず、睨むトシキに、僕は熱で荒くついた、息を整える。
「……当分……動けないぜ?
今日の分のギターは……これでお終いだ」
「お……お前ってヤツは……!」
僕の反撃が、相当意外だったのか。
戸惑うトシキに、僕は軽く笑う。
「……僕が『誰か』は、自分で……散々言ってたろ?
こんな……ことで『雪の王子』は、手に入らないぜ?
今は、ともかく。
昔は、薬も、暴力も。
……誰かに無理やり迫られることでさえ……
日常茶飯事だ」
……だからといって。
媚薬がまるで効かないワケじゃなく。
傷つく心が、消えてなくなるワケじゃないけど。
どうやって受け流せば良いかは、知っている。