【ほのB】リトル・プリンス
直斗から素直に出て来た『パパ』って言葉が、かなりショックだった。
女に間違えられたり、そんな扱いを受けるのは、珍しくもない。
けれども。
『パパ』なんて、聞き慣れない言葉に、くらり、と目が回る。
僕が、パパ!?
なんてこった!
直斗は、クソ生意気だけど、そんなに嫌いじゃない。
しかも、今朝だってシェリーに言われたはずなのに。
直斗に本気で『パパ』と呼ばれたことが。
『極道』と呼ばれるより。
『ヤクザ』と罵られるよりも。
がつんとした、ダメージがあるのは、なんでだろう。
パパ、と呼ばれて、いきなり年を取った気分になったのか。
直斗の一途な思いにあてられたのか。
それとも急に飛び込んで来た、『親』の責任ってヤツにびびったのか。
僕の、めまいにも似た気持ち……
要は、腰の引けてる僕なんかの名誉のために。
直斗は、堂々と、拳を握りしめたんだ。
「僕のパパは、キレイだけど強いんだぞ!
莫迦にしたら、許さないんだからな!」
……いや。
残念ながら、僕は、そんなに強くない。
身長二メートルの黒人の大男や。
怒り狂った二、三人ぐらいの暴力団員を相手にしたほうが、よほど、気が楽だ。
直斗の言葉に、僕は奥歯をそっとかみしめた。