【ほのB】リトル・プリンス
……は?
シェリーの言葉に、僕の世界が、くらり、と回る。
「……なんだって?
勘弁してくれよ。
今の僕には、そんな冗談に付き合ってやる余裕ないって……!」
「……冗談なんかじゃないわよ」
シェリーは、自分の肩にある僕の顔を両手で持ち上げると、そのまま。
僕の唇を自分の唇に重ねるように、導いた。
「ちょっ……待て……シェ……リー」
「黙って、螢ちゃん。
……今更、キス一つで、じたばたするんじゃないわよ。
初めて、の童貞(ぼうや)じゃ、あるまいし……!」
「……っ!」
シェリーから、ほとんど無理やり口づけたキスは、かなり手慣れてて、甘かった。
僕の方も、がっ、と更に上がって来た熱に浮かされるように、反射的にキスを返せば。
シェリーの表情が、今までに見たことのないほど切なげに崩れ。
とろん、とした瞳で僕を見る。
「やば……
……さすがに上手いわ……ね」
「……シェリー」
もうこんなことは、やめよう、と。
離そうとする僕の手をシェリーはすり抜けた。
そして、形の良い胸を誇示するかのように、僕にカラダを密着させて、ささやく。
「……抱いて?」
「……嫌だ」
「知ってるわよ。
兄さんが一番、だからでしょ?
あたしは、その次でも良いわよ、別に……」
ちょっとやそっとでは引き下がらないシェリーに、僕は喉の奥でぐるる、と唸って頭を振った。
「シェリー……
直斗が、隣の部屋に居る……
こんなの……!
アイツに、見せるわけには……」
「ソファで、寝てるわよ。
それよりも、あたしを抱いて、直斗の本当の父親になる気……ない?」
……え?
と驚いた僕に。
シェリーは、もう一度、口づけた。
「あたしを、螢ちゃんのお嫁さんにして。
……なんて言ったら、どうする?」