【ほのB】リトル・プリンス
 
 このとき。

 僕の心臓が、全く反応しなかったと。

 どき……と鳴らなかった、なんて言ったら、それは嘘になる。

 シェリーを嫁にもらって。

 ……直斗の、父親か……

 それは、奇しくも。

 僕が、つい、この間まで望んでいた、理想の家族の形だった。

 父親がいて。

 母親がいて。

 子供がいる。

 僕も、カラダは、普通の健康な男だから。

 そんなことになったら、もしかしたら、直斗に弟か、妹ができるかもしれない。

 ……だけど。

 だけど。

 ……ハニーを。

 ハインリヒを裏切ることなんて、出来ない。

 シェリーが僕の好みなのは、あくまで『ハニーに似ているから』で。

 僕がほしかった理想の家族の形は、絶対『ハインリヒが混る』ことが前提でしかなかった。

 カラダが求める欲望のまま。

 間違っても、シェリーを抱いたりなんてしたら。

 誰も、幸せになんて、なれない。

 ……そんなことは、もちろん。

 シェリーだって、判ってるはずだと思ってた。



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