【ほのB】リトル・プリンス
 思わず、ぽろっと言ってしまった、みたいな。

 シェリーの本音に聞き返せば。

 彼女は、しまった! と思ったみたいな顔をした。

「……直斗のため?」

「……そうよ。
 もちろん、それだけじゃないけど」

 シェリーは、頬を膨らませた。

「あたし、今まで。
 螢ちゃん達との関係が、とても好き、だったのよ。
 兄さんと、螢ちゃんがラブラブなのをのんびり見ながら。
 あんまし邪魔しない程度に関わっていく、繋がりが、ね。
 ここに居れば、あたしたちは全員、家族で。
 誰も、亡くなった早瀬倉の事を忘れろ、なんて言わないし。
 直斗も、螢ちゃんたちの事が大好きだし。
 ず~~っとこんな感じが続けばいいなって思ってたのに」

「シェリー」

「……だけど最近、職場でね。
 あたしに積極的に近づいて来る男がいるのよ。
 ……そいつ、莫迦じゃない!?
 あたしには、早瀬倉がいるのに。
 直斗や、兄さんや、螢ちゃんがすぐそばにいてくれるのに!!
 この、あたしに向かって、付き合ってくれ、なんて!」

 なんだか、泣きそうな顔をして拳骨を握るシェリーに、僕はそっとほほ笑んだ。

 嫌だったらキレイに振ってしまえばいいだけなのに、悩むなんて。

「……シェリーも、そいつの事がキライじゃないんだね?」

「そうよ!
 だから、余計困ってるんじゃない!
 このままじゃ、自分の居場所が、すごく中途半端だったなんて、思い知らされたのよ!
 こんなに、不安定な関係は、直斗にとってもよくないわ……」

 そう、目を伏せるシェリーに僕は頷いた。

 ……だから、シェリーは僕に向かって。

 自分を愛すのは、二番目で良いから『お嫁さんにして』なんて言ったんだ。

 今の関係を、より、強固にして、続けたいがために。

 そして、一方で。

 僕に振られたいとも、思ってる。

 僕が、ハインリヒしか選ばないだろう、ってコトも知っていて。

 ちゃんと断られることによって、きっと。

 過去を全部忘れて、前向きに歩こうとも、思っているんだ。

 

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