【ほのB】リトル・プリンス
 いつも、きっぱりと白黒をつけるシェリーには、どちらの想いも捨てがたく。

 それで、相当悩んだに違いない。

 過去に留まるか。

 未来に進むか。

 シェリーの本音はどちらだろう?

 普段ならともかく。

 僕のこんな状態を知って『告白』してくる辺り。

 シェリーは過去に留まっていたいのか?





 ……いいや。

 きっと、違うな。


 

「……やっぱり僕は、シェリーを抱けないよ。
 僕は、ハインリヒのことを一番に、愛してるから」

 まだ。

 上に乗っかったまま、動かないシェリーを静かにどけながら、僕は、言った。

「シェリーが義理の姉だというのなら、家族のために心を砕くことはできるけど。
 シェリーの望む形では、きっと、愛せない……
 僕の『嫁』にでもなった日には。
 もっと中途半端で、苦しい日々が待ってるよ。
 それよりも、シェリーは先に進まなくちゃ」

「……そうね」

 シェリーも、答えを判っていて。

 僕のするままに、ベッドから大人しく降りた。

「……ごめんね、螢ちゃん。
 判っているのに、変なことにつき合わせて……」

「いいよ。
 早瀬倉が死んで、もう、かなり経つし。
 ここらでシェリーも自分の事を考えてもいいんじゃないかな?
 別にシェリーに新しい恋人が出来たって、ハインリヒはあんたの兄貴だし。
 僕は、直斗と従兄弟なのは、変わらないんだから」

 どうやら、ようやくふっきれたらしい。

 いつもの感じに戻ったシェリーに、僕は、ほっとほほ笑むと、本格的に手を振った。
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