【ほのB】リトル・プリンス
……それから、約三十分後。
シェリーの電話を受けて、慌てて帰って来たハニーを抱きしめて。
僕は、ようやく。
意志で歯止めをかけていた欲望を全部、解放することが出来た。
ハニーが着ている通勤用のスーツを全部脱がしてしまうのも、もどかしく。
からからに渇いた喉を癒すかのように。
ハニーのしなやかなカラダをむさぼり、抱いて、抱いて。
ようやく、満足した頃。
へとへとになった僕を、浴室の湯船に放り込んで、今度は。
ハニーの方が、僕を抱きしめた。
「……例え、インフルエンザにかかって、高熱を出しても。
私の職場(ところ)に、連絡一つよこさない螢が大変だって聞いて、かなり、驚いた」
部屋でのお返し、とばかりに。
浴室で、散々僕を愛してくれたあと。
シェリーからの緊急電話が、こんな用だったのか、と微笑むハニーに、僕は、クビを引っ込めた。
「……ごめん……
もしかしなくても、まだ仕事中だったろ?
変なことに呼び出して、邪魔して悪かったよ」
「……そうでもない。
もう、フレックスの使える時間だったし。
……何よりも、螢が。
私の事を待てないほど、欲しがってくれたのだから、いいよ」
僕のまとった泡々の服を。
暖かいシャワーで、消し去りながら。
ささやくハニーが、とても嬉しそうだった。
だから、ハニーを勝手に呼びつけたのは、実は、シェリーだ。
なんて言えずに、僕は、そっとため息をついた。
そんな僕に、ハニーが心配そうに眉をひそめる。
「……それで。
本当の所、何があったのか。
私は、君に、聞いても良いのかな?」
「ハニー」
「君は、いつも。
自分からは、ほとんど誘ってこない。
しかも、私に抱かれても、自分で抱くことはあまり無いのに。
今日は、やけに情熱的すぎる。
しかも、私は。
螢のここに、跡をつけた覚えが、無いのだが――」