無題(仮)
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「ここで降ろしてください。」
小嶋ゆずなは、タクシーの運転手にそう告げ
コンビニの前で降りた。
去年、豊川株式会社に就職して
憧れの社長秘書になった。
でも、現実と妄想は大きく異なっていた・・・
頼まれる仕事はつかいっぱしりのような雑用ばかり。
私の想像していた
社長の斜め後ろに立って革の手帳を開いて
今日の予定を伝える様なことは一つもない、
今の社長は私が入社した時に
後を継いだばかりでまったく自覚がない。
休むことなく皆勤だけど
出社しても、ぐーたらしているばかりで
業務はなにもしない。
弟の雅樹さんにまかせっきり…
「雅樹さんの秘書になりたかった…」
とかつぶやいてみる。
「いらっしゃいませ!」
レジをしていたのは化粧の濃い学生だ、
私もこんなんだったなー…
「380円です。カードありますか?」
精算を済ませコンビニと職場は眼と鼻の先なので
徒歩で向かうことにする。