僕らの瞳にうつる世界。


音楽の授業以外で初めて入ったかも。



「ピアノも弾けるんですね」


「まあな。ついでにバイオリンもできる」


「すごっ」



目を見開いて感心していると先輩は伏し目がちに悲しく微笑んだ。


先輩……?



「親父が英才教育だったから。親父のお陰。これだけは感謝してるんだ」



そう言うと彼は笑ってピアノのシの鍵盤を人差し指で叩いた。


…悲しい音に聞こえた。



「親父と賭けをしたんだよね」


「賭け?」


「そう。…このオーディションを受けるんだ」



先輩がポケットから取り出してあたしに渡したのはあるチラシだった。

それを受け取る。



「シンガーソングライター、新人発掘オーディション……」



チラシの見出しを口に出す。

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