僕らの瞳にうつる世界。
最近蕾をつけた桜の木々達が拍手するかのようにザワザワ揺れる。
歌を聴き終わったあたしのぐしゃぐしゃな泣き顔を見て先輩は愛しそうに笑った。
ギターをそっと置くと彼はあたしの隣に座って、あたしをゆっくり抱き寄せた。
そして――――…
「……好きだ、結衣」
先輩の温もりに包まれながら愛の言葉を聞いているなんて、…なんて幸せ者なんだろう。
「うんっ。…あたしも好きだよ…!」
…ずっと、こんな幸せが欲しかった。
好きな人と、ただこうして〝好き〟と言い合うだけの平凡な幸せ。
だけど、こんな幸せでも〝当たり前〟じゃないってことをあたしは忘れない。
絶対に。