僕らの瞳にうつる世界。
「ありがとうございました」
涙も綺麗さっぱり乾いた頃。
あれから彼との会話は無かったけど、そんなに居心地の悪いものではなかった。
「送らなくていいの?」
「ハイ。先輩も、危ないんで早く帰ってくださいね」
送ってもらうわけにはいかない。
迷惑はかけられないもの。
夜道は不思議と怖くない。
むしろ好きだ。
「それじゃ……」
「や、待て。やっぱり送る」
あたしの腕を掴む先輩。
「え? いいですよ。ここから近いですし」
「ダメだ」
有無を言わせない先輩の無表情の目力。
結局この日、あたしは先輩に家まで送ってもらった。