僕らの瞳にうつる世界。
いたた……
鼻をさすりながら固まったように立っている先輩を見る。
「先輩、どうしたんで……きゃあ!」
口を両手で塞いで、あたしも固まった。
彼の顔を覗こうと前に出た時に目に入ったものが、余りに衝撃的で。
見開いた目に、涙が溜まった。
「あす…かっ……?」
やっとの思いで飛び出て来た声は、凄く掠れてて、震えていた。
ベッドに寄りかかるように座っている明日香の右手にはカミソリ。
―――そして。左の手首からは、赤黒い液体が大量に流れ出していた。
怖い――そう思った。
胸元のネックレスをぎゅっと握り締めた。