僕らの瞳にうつる世界。


『バカか。泣き虫』


「分かってます…そんなの……」



……あ。

今、たぶん彼は笑ってる。


なんか、感じた。



「明日香は無事なんですか?」


『ああ。一命はとりとめた』


「良かったぁ……」



安心して、
ヘナヘナと力が抜けたのもつかの間。


先輩は言葉を続けた。



『ただ、大量出血だったから意識はまだ……』


「えっ」


『でも大丈夫だ。時期に目覚めるって先生が』


「……本当ですか?」


『嘘つくかよ。大丈夫だ。俺を信じろ』



先輩の言葉に、ケータイを握り締めながら何度も何度も頷いて応えた。それで精一杯だったの。


…信じる。

先輩を信じるよ。

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