僕らの瞳にうつる世界。
◇
しばらくして病室を出た。
すると病室の直ぐそこにある椅子に、先輩が足を組んで座っていた。
先輩……
「いつ、病室を出たんですか?」
「お前が来てすぐ」
気を、使ってくれたのかな。
「……帰ろう、結衣」
スッと立ち上がると彼はポケットに手を突っ込んで歩き出す。
…え……?
「送ってやる」
「……………」
今、先輩……結衣って呼んだ…?
呼んだよね……?
衝撃を受け過ぎて動けないんだが…!
「おい、早く来い」
「今、先輩!結衣って言いましたよね!?」
初めて呼ばれた!!
いつもは無愛想に〝お前〟なのに!
「言ってない、バーカ」
「言った!絶っっ対に、言いました!」
「うるせ…」
先輩の、悪戯っぽい笑顔が
やけに輝いて見えた。
春―――…
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