それでもあなたに恋をする
「どうぞ。」
山口君はスマートな動作で助手席のドアを開ける。
「…慣れてるわね。」
そんな言葉が出てから、我にかえる。
山口君程の男の子なら、いくらでも女の子が寄って来るだろうから、エスコートもお手のものよね。
「……はぁ。」
助手席に座ると同時に、小さなため息をつく。
私ったら、何て余計な事を考えているのかしら?
山口君がどんな女の子達と付き合っても、私には関係ないじゃない。
部下のプライベートにまで興味を示すなんて。
ただの噂好きのおばさんじゃない。
悶々と自問自答を繰り返す内に、運転席の山口君がエンジンをかける。
「…そういえば山口君、あなたお酒飲めないの?いつもは電車なのに今日に限って車通勤なんて。」
すると、山口君はハニカミながら
「実は……苦手です。味覚が子供らしく、アルコールはどう頑張っても美味しく感じられないです。」
少し恥ずかしそうに話す彼の表情から、目が離せなかった。
かわいいと、思ってしまった。
それから、間違いなく
ドキドキ…した。